◆導入 〜いい映画も、詳細は意外と覚えていないものである
前回までのあらすじ
やっとこさセガールTRPGのテストプレイを無事に終え、ほっと一息ついていたのもつかの間。4人のプレイヤーの前に、テストプレイ第二話のシナリオタイトルが容赦なく提示された。
『沈黙の城ラピュタ』。
そもそもセガールTRPGなのに、なぜラピュタ?
答えは単純明快。「セガールはいかなる舞台、いかなる世界にあろうとも無敵である」ということを証明するためである。
そんな悪ふざ……いや壮大な実験に、直前のセッションでの疲労困憊から脳内麻薬が出まくってきたプレイヤーたちは、その命を燃やして挑戦していくのであった……。
セガールメモ 天空の城ラピュタ
スタジオジブリによって生み出される名作アニメ映画、いわゆる「ジブリ映画」の第一作であるオリジナル長編アニメ作品。
その内容やあらすじについては、今回のセッションの中でプレイヤーたちが全力をもって再現してくれるはずなので、まだ観たことがないという方はぜひご参考にしていただきたい。
ゲームマスター(以降GM) 「さて、要するに『ラピュタ』の世界でセガールが登場するとどうなるか、を実験するワケですが……一つ問題がありましてね」
元・某亀 「ん? どんな?」
GM 「いやぁ、この年になるともう『ラピュタ』ってどんな話だったかこのマスターが覚えていないんですよ。なので皆さんに、その辺もしっかりサポートして正確な話をたどっていただければと」
元・イッチロー 「うわー、こっちも覚えてねぇぇぇ(笑)」
GM 「いやぁ大丈夫ですよ。こんなキャラいたんじゃね? とか言っていただければ、マスターも『ああ、いましたね確か』と納得すると思いますので(どこか白々しく)」
この辺の振りで、プレイヤー諸兄にはマスターの言いたいことはほとんど伝わったようである。
ただ、その伝わりっぷりがマスターの予想の範疇をブッ千切っていたことには、この時マスターは愚かにも気が付いていなかった……。
元・キルゴア 「じゃあだれか、ムスカは押さえとかないといけないんじゃないですかね?」
GM 「あー! ムスカはちょっと、ラスボスに使いたいのでご遠慮いただければ(笑)。シータならいいですけど」
元・某亀 「とりあえずシータ、パズー、ドーラは押さえておくべきかね?」
GM 「いや、別に他のキャラやってもいいよ?」
元・イカ娘 「(唐突にくわっと目を見開きつつ)じゃあ俺ポルコー!!」
GM 「(ブゥッと茶を吹きつつ)ポッ……!? 『紅の豚』じゃねぇか!!(汗)」
セガールメモ ポルコ&紅の豚
『紅の豚』は『ラピュタ』よりかなり後に製作された、古き良き時代のイタリアを舞台にレシプロ機で空を舞う男たちの痛快な生きざまを描く、ジブリ作品の人気作の一つ。ポルコはその作品の主人公で、不可思議な魔法により豚の姿になってしまった飛行機乗りで、空賊などを追う賞金稼ぎ。
あくまで『紅の豚』のキャラクターであり、『ラピュタ』とは関係ないはずである。が……。
元・某亀 「(喜色満面のいい笑顔で)ああ、いたねポルコ!!」
元・イカ娘 「出てた出てた! 出てましたよねぇ!?」
GM 「……え? ああ、『ラピュタ』に出てたんだポルコ。イヤーシラナカッタヨ(棒読み)」
元・イカ娘改めポルコ 「ルパンにしようかとも一瞬悩んだんだけどねぇ〜」
GM 「『カリ城』じゃねぇか!!(汗)」(←『ルパンV世 カリオストロの城』もまたジブリ作品)
ポルコ
能力値: 武力6、敏捷6 他すべて5
年齢・性別: 40歳 男豚
職業: 飛行機乗り(賞金稼ぎ)
背景・特徴: 魔法で豚になった。
元・イッチロー 「なるほど、そういう感じでいいのか(笑)。じゃあ一人くらいは、空気読んでるヤツにしようかな?」
GM 「(おお、なんと協力的な! 頑張れ、頑張ってもうちょっとキャラを『ラピュタ』寄りに)」
元・イッチロー 「ブシェミ的にいこうかな?」
GM 「(錐揉んで倒れる)」
セガールメモ スティーブ・ブシェミ
アメリカの俳優であり、乱杭歯や独特の目元など、決して二枚目ではないが味のある顔立ちと、独特の雰囲気が人気の個性派。その出演作は数多く、多くの人に顔写真を見せれば「ああ、あの人!」と納得できるであろうほどに、数々の理想的な名脇役(主に空気を読まない感じの人物)を演じてきた。
特に映画好きに有名なのは、『レザボア・ドッグス』のMr.ピンクや、『ファーゴ』『アルマゲドン』などでの好演。かつて消防士と役者を兼業していたことがあり、ブレイク後も911事件の際には匿名ボランティアで、消防士時代の服を着て救急隊に加わっていたというエピソードも有名。
正直、ジブリ作品に出ていそうな顔立ちではある。特に目元。
元・某亀 「ブシェミ!? ブシェミ的なものになるの!?(笑)」(←映画好きの魂に火が付いた)
元・イッチロー改め部車見 「好っきなんスよぉ〜スティーヴ・ブシェミ!!(笑)」
元・某亀 「ブシェミかぁ〜。うん、ブシェミ出てたよね『ラピュタ』に!」
GM 「いたんだぁー!(自棄)すげぇな『ラピュタ』、今度借りて観直さなきゃ!!」
部車見 「ちゃんと物語に協力するために、パズーっぽく鉱夫兼メカニックってことにしておきますよ!」
捨分 部車見(ステブン=ブシャミ)
能力値: 武力7 他すべて5
年齢・性別: 15歳 男
職業: 鉱夫 兼 メカニック
背景・特徴: 空気読まない サキソフォン
元・某亀 「うーん、じゃあ僕は……ジャック・ブラックとかいっちゃおうかな!?」
GM 「ちょ、ま、ジャック・ブラック出てたの『ラピュタ』!?(汗)」
元・某亀 「というか、ジャック・ブラックの一番高い能力値って何だろう。魅力?」
GM 「むしろ全能力値3くらいの感じがするんだが……」
セガールメモ ジャック・ブラック
ファッティな体型と陽気な人柄から、三枚目デヴを演じることにかけては右に出る者のいないハリウッド俳優。『ハイ・ファディリティ』などでアメリカンなオタク青年を多く演じるため、まさにアメリカンオタクの中のアメリカンオタクといったような印象を持たれる、ある意味偉大な人物。『スター・ウォーズ』のフィギュアとか超持ってそう。
かつてコミカルバンドを組んで活動してテレビ出演もしたことがあり、出演作内で歌ったり踊ったりすることも多く、とにかく調子が良くてそのせいでひどい目に合う役が似合いすぎる41歳。現在(2011年4月末)公開中の主演映画『ガリバー旅行記』を見れば、彼のすべてが分かると言っても過言ではないので、興味を持ったという方にはご視聴を勧めたい。
GM 「つか、何役で出てたんだよジャック・ブラック!?」
元・某亀改めジャック 「まぁ、名前そのまんまだとアレだからブラック・ジャック・ブラックってことで!」
部車見 「ブラック・ジャックみたいなことになってますね(笑)」
ポルコ 「それ別の人(笑)」
ブラック・ジャック・ブラック
能力値: 体力7 他すべて5
年齢・性別: 41歳 男
職業: オタク
背景・特徴: ジャック・ブラック
元・キルゴア 「うーん……あの将軍とかやりたいんですけど(笑)」
GM 「(叫び過ぎて酸欠でフラフラしつつ)え? あー、いましたねぇ。『特務の青二才め!』とか叫ぶ人……」
ポルコ 「あー、特務の青二才ってセリフは確かに言ってた言ってた(笑)」
元・キルゴア改め将軍 「たしかモームだかなんだかいう将軍なんですけど、分かんないんで山本
五十(いそ)ロックで!(笑)」
ポルコ 「それってアレでしょ? タイで運び屋やってて、ワイシャツ着たまま銃弾の雨を掻い潜るんでしょ?(笑)」
GM 「それは『ブラックラグーン』のロックだ!(汗)」
将軍 「クシャナ殿下とか探しに行かなきゃいけない気もする……」
GM 「それは『風の谷のナウシカ』ですから!(汗)」
ジャック 「王蟲の群れにラピュタの雷(←ラピュタに搭載されているすごいビーム兵器)を放つんでしょ?(笑)」
GM/ムスカ 「『見ろ! 王蟲がゴミのようだ!!』」
ジャック 「ラピュタ早すぎて腐っちゃうよ(笑)」
GM 「(はっと我に返り)ええぃ貴様ら! そういうのはちゃんとセッション内で10点消費して言いなさい!!」
山本 五十ロック
能力値: 武力6 敏捷6 他すべて5
年齢・性別: 56歳 男
職業: 将軍
背景・特徴: 特務の青二才と仲が悪い
GM 「……えー、なんかGMとしても期待はしてましたが、見事に期待の斜め上を行ってくれているようですね(汗)。ちなみに今回のこのオマケセッションでは特例として、セガールっぽい行動のみならず、『ラピュタ』っぽい、ジブリっぽい行動などをしてくれた人にも、物語を補完することに協力してくれたお礼として、セガールポイントを差し上げます」
ジャック 「……そういや、アニメ版のブラック・ジャックの声って大塚明夫ですよね(ぼそり)」
GM 「いやもう君はさっきので十分だからセガール語を喋るな(笑)」
ジャック 「大丈夫! 今回は脇役オンリーで行きますから!」
部車見 「すると主人公は…………ポルコか」
ポルコ 「え!? ポルコ主人公だと魔法解けちゃうじゃん(笑)」
GM 「つーか、シータどころかパズーも居やしない……」
ジャック 「いやいや、パズー!(鉱夫役の部車見を指さしつつ)」
部車見 「え、じゃあ15歳ぐらいにしておきますよ? なら朝にトランペットだかサキソフォンも吹かなきゃ!」
GM 「ブシェミがパズー役だとォォォオオオオ!?(汗)」
名作『天空の城ラピュタ』に、セガールがいたらどんな話になるのか……。
そんな悪ふざけだったはずのオマケセッションは、いつの間にか『天空の城ラピュタ』に、ポルコとジャック・ブラックとスティーヴ・ブシェミがいたら、という、想像もつかない展開になりつつあった。
今思えばGMは、この時点で将軍以外のプレイヤー全員を正座させ、キャラシーをすべて破り捨て、パズー、シータ、ドーラのキャラシーを無理矢理押しつけるべきだったのかも知れない。
だが、TRPGは始まってしまえば止めようがないのである。今ここに、空前絶後のダメセッションがその幕を上げようとしていた……。
昔の偉い人は言っていたように、もはや賽は投げられたのである!!
※※※ 次ページから展開するのは有史以来稀なほどの、第一話よりもさらに輪をかけて、とても、とても精神衛生上ひどいリプレイですが、それでも覚悟を決めて読まれますか?